「あ、これは”言葉”では無理だ」
山中漆器の工房で、木地師(きじし)の手元にカメラを向けたとき、正直そう思いました。
ろくろの上で木地が回り、そこに刃物がすっと当たる。職人は、手元の型(かた)で形を確かめながら削っていきます。けれど——最後の、紙一枚ほどの”薄さ”や”なめらかさ”は、型では測りきれない。そこで頼りになるのは、削れていく”音”と、手に返ってくる”感触”だけ。
——この”最後のひと削り”を、どうやって次の人に伝えるのだろう。
20年、さまざまな「ものづくりの現場」を撮ってきて、何度もぶつかってきた問いです。ベテランの頭の中にしかない技術。紙のマニュアルでも、口で説明しても、こぼれ落ちてしまう「暗黙知」。それを、どう次の世代へ残すのか。
ベテランの技術が”伝わらない”のは、なぜか——「暗黙知」という壁
職人の頭の中の技術には、2種類あります。ひとつは言葉や数字にできる知識(材料、温度…マニュアルに書ける部分)。もうひとつが、言葉にできない知識——「このくらいの力で」「この音がしたら」。専門的には暗黙知(あんもくち)と呼ばれます。
技術継承でいつも壁になるのは、後者です。山中漆器の”最後のひと削り”も、鋳造の溶けた金属の見極めも——ベテランは当たり前にできるのに、「なぜできるのか」を自分でも説明できない。だから、教えたくても教えられないのです。
紙のマニュアルと口頭のOJTが、こぼし続けてきたもの
これまで技術を残す手段は、紙のマニュアルとOJT(現場で先輩が教える方法)が中心でした。
でも紙は”止まった情報”です。写真と文字では、動きのスピードも、力の入れ方も、削れる音も残せない。いちばん大事な部分が抜け落ちます。OJTはOJTで、ベテランの時間を奪い続け、人手不足の現場では教える時間が取れない。教える人によってばらつきも出る。そして何より、その人が辞めた瞬間、技術はゼロになります。
動画だからできる、技術の「見える化」
ここで動画が効きます。動画は、動き・速度・音・間(ま)をまるごと残せる。手元のアップをスローで、何度でも繰り返し見られる。「どのくらいの力で」「どんな音がしたら成功か」が、見るだけで伝わります。
しかも一度撮れば、何度でも同じ品質で教えられる。教える人によるばらつきが消え、新人が自分のペースで学べる。字幕をつければ外国人スタッフにも使えます。実際、動画マニュアルで「新人教育の時間が半分になった」「”誰が教えても同じ”を実現できた」という現場は少なくありません。
ただ撮るだけでは残らない——撮影で僕らが意識している3つのこと
ただ、正直に言います。カメラを回せば技術が残る、わけではありません。“伝わる”動画にするために、現場で意識していることが3つあります。
- 手元を主役にする。職人の手の動きこそ最大の情報。寄りのアングルを惜しまず、必要なら複数カメラで角度を変えて押さえます。
- 音を捨てない。削れる音、機械の音——ベテランが頼りにする”音の手がかり”をきれいに録る。音も技術の一部です。
- ベテランに、言葉にしてもらう。撮りながら「今、何を見ていましたか?」と問いを重ね、暗黙知を少しでも言葉に翻訳してテロップに残す。いちばん手間がかかり、いちばん価値のある工程です。
この3つは、汎用の編集ツールで内製するだけでは、なかなか出せない部分だと思っています。
技術継承は、ベテランが”いるうち”にしか始められない
最後に、いちばん伝えたいことを。技術継承の動画化は、ベテランが現役でいるうちにしかできません。「いつかやろう」と思っているうちに引退してしまえば、頭の中の技術は二度と取り戻せない。技術は、会社が長い時間をかけて育てた資産です。「あのとき撮っておけば」となる前に、いまある技術を未来に残しておきませんか。
製造業の技術継承、動画で残しませんか
mmmmは、ものづくりの現場に入り、ベテランの技術を”伝わる動画”として残すお手伝いをしています。「何から始めればいいか分からない」というご相談からで大丈夫です。まずはお気軽にお問い合わせください。


コメント